いもこみそ――味の記憶
カビが生えそうな里芋と、
カピカピになりつつある板酒粕を救済するために
「いもこみそ」を作った。
いもこみそ――新潟の郷土料理である。
俺は阿賀北出身だし、家の「いもこみそ」しか知らないので
これが本当の「いもこみそ」なのかはわからない。
ネットで検索すると多少ヒットするのだが、
俺が求めているのとは違うようだ。
記憶の味をたどりながら、まずは作ってみる。
☆材料
- 里芋 適量、あるだけ
- だし汁 里芋がひたひたくらい
- 酒粕 適量
- 味噌 適量
- かつおぶし 好みで
……「適量」ばっかりだけど、味見して足したりしてたので
どれくらい使ったかわからない(^^;)
☆作り方
まあ、その、なんだ。
味噌以外を煮るんだよ。
酒粕は多めで、汁にとろみが付くくらいかな。
味噌は最後に溶き入れる。
……適当だなー。
子どもの頃、ばあちゃんがよく作ってた。
ばあちゃんは2年前に亡くなったけど、こんなことならちゃんと聞いておけばよかった。
ほかにも郷土料理っぽいものがいっぱいあったのにな。
子どもの頃はそんなに好きじゃなかったものが多いけど、
この歳になるとそういうものが欲しくなってくる。
できあがった「いもこみそ」は、なにか足りないような気がするけど記憶の味に近かった。
汁をご飯にかけて食べもしたし、おいしかった。
妻とむすめはそれほどでもなかったようだけど(ToT)
この「いもこみそ」は、俺が味や大雑把な作り方を記憶していたから作ることができた。
「いもこみそ」の記憶を引っ張り出したとき、ばあちゃんのことはもちろんだが、
故郷の家の流し、長く使って煤けてへこんだアルマイトの鍋、
使っていた茶碗の柄や壁にできた油染みの形とか、家族で囲んだ食卓の匂いとか、
どうでもいい記憶までもがズルズルと一緒に引きずり出されてきて、
ちょっとセンチな気持ちになった。
「味覚」に関する記憶だから鮮明なのかもな。
さて、我が身を振り返ってみて、
俺が死んだ後、むすめは「おとうちゃんの味」として何を思い出してくれるだろうか?
「おとうちゃんスープ」
- 鶏がらスープの素、乾燥ワカメ、長ネギ、コショウ、しょうゆ、ごま油のなんちゃって中華スープ。
「おとうちゃんチャーハン」
- 卵、長ネギ、ウェイパー、塩、コショウ、しょうゆのなんの工夫もないチャーハン。
「おとうちゃん唐揚げ」
- 保育園の栄養士さんに教えてもらった幼児向けの、ガッツリ系ではないやさしい味の唐揚げ。
むすめが好きだというものを羅列してみたが、うーむ……。
こんなんじゃむすめの記憶に残してもらえない。
もうちょっと精進するかね。